私の記憶

去年も一昨年も流氷の状況はとても悪かったが、
だから余計に感じるのかもしれないが、
今年の流氷はここ数年の中で最も良い感じがしている。
私の記憶の中ではあるが、古き良き頃を思い出させるほどに、
見渡す限りの海面を流氷が埋め尽くしている。
流氷が接岸すると沿岸の冷え込みは一段と厳しくなる。
網走で生まれ網走で育った私にとって、
毎冬オホーツク海を埋め尽くす流氷とは、
春に花が咲き秋に紅葉することと同じように当たり前の自然現象だ。
最近は減少が著しくなってしまったが、
私が子供の頃の流氷は、今とは比べ物にならないほど強い勢力を持っていた。
その当時、流氷初日から1週間ほど過ぎた頃のある夜、
それまで聞こえていた海鳴りが急に途絶え妙に静かになった。
同時に家の中にいるのになんだかやけに寒気を感じた。
そんな時に決まって親父が「流氷が接岸したな」と言っていた。
そしてシバレた翌朝、通学路の途中から海を眺めると、
見渡す限りのオホーツク海は一面真っ白に変わっていた。

この感覚は今はもうほとんど感じることが無い。
たかだか三十数年しか生きていない私の記憶も、
今となってはとても貴重なものになってしまったかもしれない。
今日の網走は午前中に大粒の雪が降り、午後から少しづつ青空が広がった。
沿岸に押し寄せた流氷の上にも雪は降り積もり、
その雪をじっくりと見てみると、多くの結晶が六方向に長く樹枝を伸ばしていた。




